かつてS-A4 SPT-PMというスピーカーがあった。
PMは“ピュアモルト”の略だというと思いだされる方もおられるだろう。2005年にpioneerが作った小型スピーカーである。
エンクロージャーにサントリーが使用していたウィスキー樽の廃材を使ったスピーカーで、ベースとなったS-A3 Spirit(2000年)とは段違いのバリューを誇っていた。
価格もA3 Spiritが1本あたり13,800円、S-A4 SPT PMは同39,900円さらに翌年出たS-A4SPT-VPは同45,715円と3倍を超える価格となっている。
オリジナルとPM系は同じ径のウーハーを使っており正面から見てサイズ感は全く同じにみえる。しかし、よく見るとウーハーのセンターキャプの色がちがう。
パイオニアの説明でもオリジナルは「ケブラー繊維」、S-A4 SPT PMは「センターキャップも含めてアラミド繊維」と書かれている。ケブラーというのはデュポン社の登録商標で商品名。アラミド繊維の一種である。これでわかることはオリジナルの時代はデュポン社製の素材を使ったウーハーだったが、S-A4 SPT PMの頃は違うということである。(どれほど違うかは不明)
もうひとつの違いはエンクロージャーの大きさ(重さ)で、
S-A4 Spirit:外形寸法 幅154x高さ246x奥行195mm 重量 3.5kg
S-A4 SPT PM:外形寸法 幅154x高さ246x奥行213mm 重量3.7kg
となっている。
それ以外のスペック上の違いはほとんどないのだが、エンクロージャーの材質と重量が寄与したのか音は全然違うと言われている。(3倍の価値はあるというのが世評である)

三代目のS-A4SPT-VPになるとウーハーも変更になり、「振動板にはTADのノウハウを継承したパルプ振動板を採用しています」(PioneerのHP)となった。TADを持ち出してくるあたり値上げのエクスキューズなのかもしれないが、2006年にはアラミド素材ブームは終わっていたのかもしれない。(1990年代のおわりから2000年代の初頭にかけて猫も杓子もアラミド繊維のユニットを使っていた。DENONもそうだった。その走りは1990年代初頭のB&Wだと思う)

最初から盛大に脱線しているが、今回はS-A3 LRの話である。

S-A4 Spiritに連なるAシリーズ(エンクロージャーが天然木っぽい)のスピーカーでAV用途を想定した製品である。

始まりはやっぱりHARDOFF

HARDOFF店頭でS-A4 Spiritを見かけた。ベストセラーモデルなので珍しくはないが、程度の割に11,000円の価格がついていた。
IMG20221231162846

「ふーん」と思っているとその横にS-A3 LRがおいてあり13,200円の値付けだった。
どちらも小型スピーカーのカテゴリーだが、10㎝ウーハーのS-A4に対して13㎝ウーハーを搭載するS-A3の方がまともに見えた。何より重さが7Kg(1本あたり)近くあり、質感の割に安いと思った。

IMG20221231162901
横幅が同じで縦に細長い形はやや不格好だが容量を稼ぐためと思えば納得できる。
AV用としてフロント用のS-A5(トールボーイ型で同じユニット=13㎝ケブラーコーン2発)と音を合わせるため同じウーハーを使っている。細長い形は、なんならS-A5を途中でぶった切ったようにも見える。

Pioneer製のスピーカーには悪い印象がない。
以前所有していたバーチカルツインのスピーカーは小口径のウーハー2発でツィーターを挟み込む形で、そこそこの低音と抜群の定位感を持っていた。手放したことを後悔した1台である。
ただその頃(1990年代初頭)と違い2000年前後からほぼすべての製品がMADE IN JAPANではなくなり、以前SC-30Eのところでも書いたがAV対応型スピーカーが主流になるといった時代だった。このS-A3もA5やA4と組んで5スピーカーや7スピーカーとして使用することを想定した設計になっている。(つまりリアスピーカーとしての使用が想定されているのだ)


つづく